泣き止まない子どもをただ受け取ってみたら・・・
家族、親子、子ども・親との関係などはじめまして。
滋賀県大津市で放課後等デイサービスを運営しています、
大和 幸子(やまと さちこ)と申します。
放課後等デイサービスとは、
放課後や学校休業日に障がいのあるお子さんを預かる、
通所訓練施設の総称です。
私がコミュニケーショントレーニングネットワーク®に出会ったのは、
「テクニックを超えるコミュニケーション力のつくり方」
というタイトルの体験講座に参加した、今から約4年前ことでした。
とっても不思議なそのタイトルに惹かれ参加してみると、
半年後に開設する施設に通う障がいのある子どもたちとのコミュニケーションに、
このパラダイムシフトコミュニケーション®のセンスを使えるだろうと確信を持ち、
連続講座に申し込み、参加しました。
そしてそれ以来、施設の子どもたちはもとより職員にも、このセンスを日々
使い続けています。
私の施設には、小学校1年生から高校2年生までの障がいのある子どもたちが
通っています。自閉症と呼ばれる子どもたちの中には、予測できないことや
納得できないこと、困ったことやびっくりしたこと、不快なこと等々が起こった時、
パニックを起こす子がいます。
学校が休みの日には、
私が子どもたちのためにお昼ご飯として、給食を作っています。
ある土曜日のお昼前、
自閉症のAちゃんがプラレールで遊びながら、突然泣きだしました。
どうやら、お気に入りの電車が動かなかったようでした。
周りの職員は、
「大丈夫、大丈夫・・・」と言いながら背中をトントンしてみたり、
「こっちの電車で遊んでみたら?」と提案してみたり、
「何とか直らないかな?」と対処したり、
「外に遊びに行こうか?」と
Aちゃんの気をそらそうとしたりしていました。
でも、Aちゃんが泣き止むことはなく、
どんどん泣き方が激しくなり、最後は手足をバンバンと床に叩きつけながら、
「ギャー!」と悲鳴のようになりました。
私は、子どもたちのご飯を作っていたのですが、調理の手を止めて、
Aちゃんの側に座りました。
「電車、動かなかったんだね・・・」と、
Aちゃんの今ある状態を、ただ受け取りました。
「ただ受け取る」とは、
コミュニケーショントレーニングネットワーク®の講座で扱うテーマの一つで、
その人にある身体の感覚や思いや考えなど、あるがままを「ただ受け取る」
のです。
そうやって、Aちゃんの今ある状態をただ受け取ったら、
Aちゃんは私の膝に突っ伏して、今度はシクシク泣きはじめました。
そして、少し泣いた後、
顔を上げて「ごはん。お肉。」と言いました。
え?お腹が空いていたの?
周りにいた職員たちは大笑いしながら、
「もうちょっとでご飯できるから、見ながら待っとこうか?」と声をかけると、
Aちゃんは「うん」と返事をし、台所の窓から調理風景を覗いていました。
私たちは、プラレールが動かずに泣き始めたAちゃんを見ると、
「プラレールが動かなかったから泣いた」と思います。
そして、私たちがそうだとした原因について対処しようとします。
しかし実際には、泣き始めた原因に対して提案・対処・気をそらすなど
をした時には、Aちゃんの感情はどんどん激しくなりました。
原因を何とかしようとするのではなく、
Aちゃんの状態を「ただ受け取る」と
Aちゃんの「動かない電車」によって湧いた感情は
問題なくなってきて落ち着きました。
そして、
お昼どきだったので「お腹が空いている」 ことに気づいて、
「お肉(が食べたい)」という意志が出てきました。
「ただ受け取る」のパワフルさを改めて実感しました。
今回のことは、ほんの一例にすぎないのですが、
この「ただ受け取る」をはじめ、
コミュニケーショントレーニングネットワーク®で学んだことを、
運営している施設に存分に活かすことで、
言葉を持たない子どもたちとのコミュニケーションがスムーズになったり、
障がい特有と言われていたこだわりがなくなり
自分次第でチャレンジできる子が増えてきたり、
宿題が嫌で1時間以上暴れていた子が
何も言われなくても自分から進んで宿題をやるようになったり、
自分を傷つけなくなったり・・・。
以前の私は「やらない子」には、言い聞かせたり、
「できない子」には、何度も同じことを練習して克服させようとしたり、
問題行動は注意してやめさせようとするのが
「当たり前」だと思っていました。
コミュニケーショントレーニングネットワーク®に出逢ったことで、
以前の私が「当たり前」としていたことは、
当たり前ではなかったことに気づきました。
そして、子どもたちもスタッフも、私も、
軽やかで生き生きと過ごせる幸せな日々を送っています♪
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