「たった一言で、伝えやすくも、聴きやすくもなる」という発見

　パラダイムシフトコミュニケーション®︎のトレーナーのぺホスです。
　
　わたしは、よくNetflixでアメリカのドラマを観るのですが、気に入ったドラマは2回は観るようにしています。

　1回目はストーリーを楽しむ目的で、2回目はセリフの言い回しからコミュニケーションを観察する目的で観ています。（ちなみに、2回以上観たドラマは「グッドドクター」「メンタリスト」「ブラックリスト」です）

　だいたい、1回目に観ている時にもセリフは気になっているんですが、観ていると、

　「こういうこと言えるって素敵だな」
　「これ、日本じゃ言わないけど、この一言があると安心できるよね」

　と思うことが多々あります。

　あるドラマを例に説明します。

　主人公が大切な人を亡くして心が傷ついている時に、上司が気持ちを吐き出させてあげようとするのですが、主人公が「いまは話したくありません」と、怒り気味に心を閉ざす場面がありました。

　これが日本のドラマなら、「じゃあ、何かあったら話を聴くから話しかけて」というニュアンスのセリフが出てきそうなところですが、そのドラマでは違いました。

　「覚えておいてくれ。もし息苦しさを感じて話したい時は、いつでも来てくれ」

　このセリフで３か所、素敵だなと思うポイントがありました。

　一つ目は、話しかけるタイミングとして、「何かあったら」ではなく、「息苦しさを感じて話したい時」と具体的な状況を想定して伝えていて、言われた側が話したくなった時に、話しかけやすくなるという点です。

　「何かあったら」と言われても、「こんなことくらいで」と遠慮してしまうのが日本のコミュニケーション文化だったりするので、具体的に声をかけるタイミングを表現してもらえると、ずいぶん話しかけやすくなりますよね。

　そして、二つ目は、具体的な状況の想定は、相手への思いやりが伝わる一言になるという点です。

　「大切な人を亡くすという体験をすれば、息苦しくなって辛くなることがあるだろうと、わたしは想像しているよ」と、上司の価値観が感じられる一言だし、主人公も「わたしの気持ちを汲み取って話を聴いてくれそうだ」と思える一言だったと思うのです。

　最後に、三つ目は、「覚えておいてくれ」という一言があると、次に続く言葉への聴き耳が立ちやすくなるという点です。

　聴き耳を立てる（相手が聴ける状態にする）言葉って、もっと日本語でも使っていいと思うんです。

　・君のことが心配だから一言だけ言わせてほしい。
　・怒らずに聴いて欲しい。
　・本題に入っていいかな？いまから厳しい話が続くよ。

　この一言があると、話し手が次のようなスタンスで話そうとしていることが伝わります。

　「心配している」
　「怒らせたいわけじゃない」
　「傷つけたいわけじゃない」

　同じ内容を伝えるにしても、このスタンスを伝える一言があるかないかで受け取り方も変わります。

　わたしは仕事柄、会社のリーダークラスの方にコーチとして関わることが多いのですが、部下への指導で行き詰まっている方の中には、「相手を傷つけるのではないかと思うと、どう伝えるかを迷って、つい指導面談を先延ばしにしてしまう」という方もいらっしゃいます。

　自分の『あり方（スタンス）』として、「傷つける意図がない（傷ついてほしくない）」のであれば、例えば「いまから話すことは、あなたを傷つけたくて言うわけじゃない。今後の仕事で役立ててほしいから伝えているんだと思って聴いてほしいんだ」と、本題に入る前に伝えるだけでいいのです。自分も話しやすくなるし、相手も適度に身構えることができて、聴きやすくなるので、コミュニケーションのセットアップにつながります。

　ところが、なぜか「傷つける意図はない」ということを言わずに（自分のスタンスを隠して）、相手に身構えるチャンスを与えず、厳しいことを伝えようとするのですから、話す前にネガティブな結果が想像されて、言いにくさがでたり、コミュニケーションを先送りにしてしまうのも、不思議じゃありません。

　話し手や聴き手の『あり方（スタンス）』が、コミュニケーションに影響することは、パラダイムシフトコミュニケーション®︎の講座の中で、数多く体験し、学びますが、そのおかげで、アメリカのドラマの中にも『あり方（スタンス）』が結果を左右することを発見できるようになりました。

　Netflixも趣味なんだか勉強なんだかわからなくなっていますが（笑）、一石二鳥ということで、引き続き、ドラマを通してコミュニケーションのセンスを深めたいと思います。