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2019年11月27日

子どもたちが自分からできるようになる魔法の言葉

教育仕事、ビジネス、経営、組織づくりCTNブログ家族、親子、子ども・親との関係など

みなさん、こんにちは。
パラダイムシフトコミュニケーション®トレーナーの大和幸子です。

私は、滋賀県で放課後等デイサービスという、
小学校1年生~高校3年生が対象の障がいのある子どもたちの
施設を運営しています。

うちの施設では、子どもたちを連れておでかけによく行きます。

おでかけは、子どもたちに楽しく過ごしてもらいながら、
子どもたちに触発を起こすことを意図しています。

スタッフは、一人一人にどんな体験が必要かを考え、
いつもと違う場所や活動では、子どもたちがどんな行動をするのか観察します。

 

ある日、近くのショッピングモールで定期的に開催されている、
「ウルトラマンと握手・撮影会」に行きました。このイベントは、
整理券を配るのではなく、当日先着100名が参加できるというものでした。

この日の「おでかけ」に参加した子どもたちは、
同じところにじっと座っていることや、動かずに待っている、ということが
苦手な子どもたちばかりでした。いつもご飯を食べる時には、一口食べるごとに
部屋を2周まわって、着席して食べて、また部屋を2周回る、なんていう
子どももいます。

私はスタッフの中に、「並べないかも」とか、「ちゃんとしないと」とか、
力の入った「自分で決めさせる」という気持ちを持ってほしくなかったので、
意図的にさらっと話しました。

「今回は、並べなくてもいいいやん、でも、並べたらいいやん、ぐらいの
ゆるい感じで行ってみよっか?」と軽い感じで、事前のスタッフミーティングで
提案しました。

そして、

子どもたちには、「ウルトラマンと握手して一緒に写真が撮れるよ」ということを
まず説明する。並ぶのが嫌なら、列から抜けて新幹線展望デッキでイベントが
終わるまで自由に過ごすということを決めました。また、最初から参加しないのも
OKだし、途中で並べなくなってもOKと決めました。

全て、子どもたちが自分で自分の行動を選択できることにしたのです。

中には、重度の知的障がいのある子もいましたが、
それでもその子の選択を尊重することにしました。

そして、どんな選択であっても尊重すると決めました。

 

当日、行ってみると既に長蛇の列でした。

子どもたちにどうするかと訊ねると、みんなは「当たり前でしょ!?」という表情で、
私の質問に答えることなく、列の最後尾に静かに並びました。

人混みが苦手で、待つことが苦手で、室内も苦手、我慢できなくなると
パニックを起こす子もいましたが、その子も当たり前の表情をして、
みんなと一緒に並びました。

私たちは、並ばなくてもいいとしていたので、時間潰しになるような絵本や
おもちゃは持って行きませんでした。みんなとただ並んだのです。

 

途中、一人が列からちょっと外れたベンチに座りました。
担当のスタッフが、一緒にニコニコしながらベンチに座ったので、
「列から外れたらダメだよ」と声をかけたのが、ちょっと失敗でした。

私は、その子に列から外れるなと言ったのではなく、
スタッフだけに言ったつもりだったのですが、他のスタッフも含め、
私の声かけから”子どもたちにちゃんと並ばせないと”が湧いてきたようでした。

子どもたちを自由に並ばせていたのに、
スタッフが”ちゃんと並ばせないと”と意識し始めると、
並んでいる子どもたちの数人がみるみる涙目になってきました。

 

「大和さん、〇〇ちゃんが泣きそうになっています。どうしましょう!?」
スタッフが焦り始めました。

 

我慢して並んでいる・・・。

声かけ失敗したな・・・。

 

すぐに、スタッフに、
「子どもたちの中には、筋肉がやわらかく同じ姿勢を保つのが難しい子もいるので、
その子にずっと立たせるのは難しいだろうから多目にみても、
スタッフが一緒に座るのは違うと思う。

その子がその子のタイミングで戻ってくるまで、私たちは並びながら見守りましょう。」と話しました。

 

すると、涙目だった子どもたちは、みるみる笑顔になり、再び、ただ並べるようになりました。

途中、一人の子が列から外れ、
いつも家族と行くときに寄るゲームコーナーに行ってしまいました。
一人スタッフがついて行きましたが、なかなか帰ってこないので、
別のスタッフが様子を見に行きました。

戻ってきたスタッフが、
「大和さん、どうしましょう。ガチャポンのところから、どうしても離れないのです。無理に連れて来ようとすると、全力で抵抗します。」と報告しに来たので、私が行くことにしました。

その子を前にして、私は自分の中の
”一緒に並んで欲しい”という気持ちを横に置きながら、ただ伝えました。

「もうちょっとで順番が来るから、ウルトラマンと握手して一緒に写真に写りたかったら戻って来てね。でも、ここにいたかったら、ずっといてもいいからね。好きにしていいよ。」

それだけ伝えて、私は列に戻りました。
すると、すぐ後ろから、付いてくるではありませんか。

そして、それから10分ぐらい一緒に並び、イベントに参加することができました。

なんと、子どもたちは全員1時間半近く並んでいたのです。

多くのケースでは、
「並びたくなかったらそこにいてもいいよ」と言う背景には、並ばない選択を尊重するのではなく、「並ばないなら勝手にしたらいい」があるような気がします。

また、保護者さんと話していても、「困ります。しなくていいなんて言えません。」と言われます。

「しなくていい」は、「してはいけない」とは違います。

 

「してもいいし、しなくてもいい。」は、
子どもたちが自分からできるようになる魔法の言葉です。

大人が子たちを何とかしようという気持ちを手放すと、
子どもたちは自分で選択し、自分次第でやりたいことを手に入れられるんだなぁと、改めて実感しました。

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