忘れられない仕事の依頼 〜想いが一致したパワフルさ〜
CTNブログ仕事、ビジネス、経営、組織づくりこんにちは。
パラダイムシフトコミュニケーション®トレーナーの種村文孝です。
今から5年前、僕が生涯教育を学んでいる大学院生だった頃、クリーニング店の店主からホームページ制作の仕事を依頼されました。
きっかけは、ある情報発信のセミナーの懇親会でした。
セミナーの講師と参加者の5人が参加していたのですが、そこで店主がクリーニングのことについて、
「もっと業界をよくしていきたい、
一般の人にクリーニングのことを知ってほしい」
と熱く語っていましたが、
「でも、自分は歳だし、PCやインターネットには詳しくないし、ブログも書いたことないし、どうしたらいいかわからない」
とも話していました。
僕は最初、ずいぶん熱い人だなぁ、と思って聞いていたのですが、ある人が
「それなら、種村さんにホームページとブログを作ってもらったらいいじゃないですか。種村さんなら自分でやっていますし、できるんじゃないですか」
と言い出しました。
この人は急になんてことを言うんだ、と一瞬びっくりしたのですが、まぁ簡単なものでよければなんとかなるかなと思って、「いいですよ」と返事しました。ちょっと面倒かもなと思いましたが、その場のノリと勢いでした。
そして、懇親会を終えた帰りの電車で、店主と2人きりになりました。
すると、
「ところで種村さん、さっきの懇親会での話ですが、ホームページとブログをいくらで作ってくれますか」
と聞かれました。
僕はそれまで、料金のことを何も考えていませんでした。
それまでそんな仕事を引き受けたことがなかったので、相場ってどれくらいなんだろう、変な金額を答えて高いと思われたくもないし、と思いながら、恐る恐るパッと思いついた金額をお伝えしました。
店主は一瞬沈黙した後、
「・・・。種村さん、本当にその金額でいいのですか。それで気持ちよく仕事できるのですか」
と言われました。
僕は、店主から、この言葉を投げかけられた時に、目が醒める思いがしました。
いかに自分が何も考えていなかったかを感じました。
それは金額のことというよりも、どういうあり方で仕事を引き受けようとしていたか、です。
この人は、クリーニング業界やサービスのことを世間の人たちに知ってもらいたいと心から思っていて、自分と一緒にそれをやりたいと本当に思っているんだなと感じました。
それに比べて自分は、
・初歩的なことだったらできるか
・料金相場ってどれくらいなんだろうか
・なんて答えるのが正解なんだろうか
なんて考えていて、恥ずかしくなりました。
そして、自分は本当にこの仕事を受けたいのか、改めて自分の意図を探りました。
意図とは、その人がいきたいと思っている軸や方向性のことで、その意図を明確にすることで、その意図に引っ張られてパワフルに動くことができます。どのように探究するのかは、連続講座で学べます。
この仕事を受ける意図を探究すると、
・この人と一緒に業界を変えるような仕事をしたい
・クリーニング店の人の想いや技術が社会に伝わるようにしたい
・一般の人々が衣服やクリーニングのことをもっと学べるようにしたい
などなど、社会の中での学びにつながる取り組みにできたらと感じました。
そして、
正直に、自分が納得できる料金をお伝えした上で、自分が思っていることもそのまま言葉にしました。
「もし、お店の売上アップにつながるようなホームページを考えていたり、デザイン性を重視するなら、他の業者にお願いした方がいいです。僕にできることは、あくまで店主の想いを言葉にして、一般の人に伝わるようなホームページやブログを作ることだと思っています。僕もホームページ作成のプロではないですが、クリーニングのことを多くの人が学べて、クリーニング業界に関する認識が変わるような取り組みができたらと思います。それでよければよろしくお願いします」
料金の額も値上げしてお伝えしたのですが、店主はすぐに快諾してくださいました。
帰りの電車の中での店主とのやりとりは忘れられないものになりました。
自分の仕事に対するあり方や想いがガラッと変わった瞬間でもありました。
店主の想いと言葉に目が醒め、自分のことやできる範囲のことばかり考えていたのが、店主に力づけられる形で、引き込まれ、同じ方向を向いて仕事をすることができました。
そこからの展開は驚くほど早かったです。
お互いに初めてのホームページ制作だったのですが、どうしたらクリーニングのことをもっと知ってもらえるか、一般の人が困っていることは何かを考え、お客さんの声を聴きながら、発信していきました。
そして、
問い合わせが殺到し、クリーニング業界の業界紙に取り上げられるなどの結果が出て、他のクリーニング店にブログのアドバイスをするまでになりました。
PCもスマホもまともに使えなかった60歳過ぎの店主と、ウェブの専門家でもなかった学生が作り出した結果でした。
そして、何より嬉しいことは、今でもこの店主と一緒に飲みながら、どうやったらもっとクリーニング店のことを多くの人に知ってもらえるかを話し合うことです。
人生や仕事について語る時間が何より楽しく、今ではかけがえのないものになっています。