「大丈夫」は大丈夫じゃない？！ ～相手の話じゃなく、存在を聴く～

パラダイムシフトコミュニケーショントレーナー®池田光余です。
看護師もしています。

みなさんは、目の前の人の様子がいつもと違うな、なんだかおかしいなと感じたとき、何て声をかけますか？

私は、コミュニケーションを学ぶ前は、いつもと様子が違う、なんだかおかしな感じがする患者さんに
「体調は変わりないですか？大丈夫ですか？」と声をかけていました。
それに対する返事は「大丈夫です」。

いつもより元気がない、家族や友人がいると
「なんだか元気がないね。大丈夫？」と声をかけました。
そんなときもやっぱり「大丈夫」。

本人が「大丈夫」って言ってるんだから、大丈夫なんだろうと、
自分の中に浮かんだ「大丈夫じゃない」感じがするのをかき消していました。

その結果、患者さんの急変・急死や家族や友人が消息不明になったり、自殺未遂をしたり、
うつ状態で何年も闘病生活になってしまったというような体験をしました。
「なんであの時もっとよく話を聴かなかったんだろう」という後悔を繰り返していました。

そんな私が、コミュニケーショントレーニングネットワーク®で、
それまで聞いたことも学んだこともない
「存在を聴く」コミュニケーションのセンスを使うようになってからの体験談です。

私の夫が20年以上経営している美容室を閉めることになりました。

閉業する前から、様子がおかしかったのですが、閉業することや経済的なことを私に話してくれた後も
無口で常にイライラしていたり、食事もすごい食べるなと思っていたら急に食べなくなったり、
夜中に目を覚ましてはため息をついたり、ただぼーっと座っていたりすることが続いていました。

まだ何か悩み事があるんだなと思って、他に何かあるのか聞いてみても
「何もないよ。大丈夫って言うてるやんか！」と余計にイライラされるという始末でした。

そこで、「存在を聴く」コミュニケーションに変えてみました。

すると、ブルブル震えながら「店を潰してしまった」と言い出しました。
顔を手で隠していましたが、泣いているのがわかりました。

これからどうしたらいいのかわからない・・・
この年まで美容師しかやったことない・・・
不安だ・・・
でも、もう美容師したくない・・・
人が怖い・・・
もう人と関わる仕事したくない・・・
こんな俺いない方がいい・・・
死にたい・・・
死ねない・・・
ごめんよ・・・ごめん

夫の友人や知人たちは、夫が子どもの頃から好きで始めた仕事だし、
手に職のある仕事で、良い技術も持っているのだからと、
なんとか違う形で続けられるよう励まし、アドバイスをくれていました。
夫のためにと、色んな情報を集めては届けてくれました。

外から見ると、夫は周りの人に親切にしてもらい、
愛されて、幸せな人に見えていましたし、
夫自身も「ほんまに有り難いな」と感謝していましたが、
実は気づかぬうちに心の深い部分ではどんどん苦しくなっていたようです。

この「存在を聴く」コミュニケーションで聴き切った後は、ちょっと面白いことが起きます。

私は夫の話をただ聴きました。一切私からは何も言う必要がありません。
（ここはちょっとポイントがあります。ぜひ本講座でお楽しみくださいね）

ところが翌日、今までやったことがない派遣の仕事をしながら、
知人のお店の一角を借りて土日限定で完全予約制で美容の仕事をしたり、
訪問美容をしたり、新たに介護美容の勉強も始めました。

いつものニコニコ笑顔の優しい夫で、前よりなんかやること増えていました（笑）

しかも、それだけでないんですよね～
そのまた翌日に更に不思議なことが起きました。

実は夫には、行方不明になっているお兄さんがいるのですが、
18年ぶりに連絡がありました。

お兄さんは映画『男はつらいよ』の寅次郎のような人で、
こちらからは全く連絡が取れず、気が向いたらフラッと地元に帰ってくるような人です。
子どもの頃から夫との兄弟仲は最悪で、すぐ喧嘩になるので会話が10分も続かないのです。

そのお兄さんから電話が入ったのです。
そして、なんと！！2時間も話をしたそうです。

店を閉めたこと。
派遣社員になって、慣れない仕事をしていること。
お店を持たず美容師も続けて行こうとしていること。

お兄さんも今、派遣社員をしていること。
お兄さんが未だにお父さんを許せないでいること。
弟の身長が低いのは自分のせいだと思っていて、合わせる顔がないと思っていること。
実家には二度と帰らないと思った出来事。
等々、今まで話したことのない話をしたそうです。

夫は「あいつ、まだ親父のこと許せてなかったんやな。
俺はお前と結婚して、いつの間にか親父が許せない気持ちがなくなってるのに気づいたわ。
ありがとう」と私に言ってくれました。
こんなこと結婚してから初めて言われました。

夫の表情も雰囲気も更に穏やかになっていました。
たぶんお兄さんも何らかの苦痛から解放されているんじゃないかな・・・

こんな風に、人と人が繋がり、許し解放されるコミュニケーションが世界に広がると素敵ですよね。