「こうあるはず」を横において得たものは?
CTNブログ医療、看護、歯科、リハビリこんにちは、コミュニケーショントレーニングネットワーク講師の椎木洋子です。
私は、大阪市内の病院で作業療法士というリハビリの仕事をしていて、リハビリ部門の責任者をしています。
先日、「相手はこうあるはず」という自分の中の考えを横において、相手と一緒の目線でコミュニケーションをしたことで、同僚たちとのパートナーシップが深まった体験がありましたので紹介します。
病院では、入院している患者さんに対して、医師や看護師、私たちのようなリハビリ職種、いろんなスタッフが関わり治療や退院の支援を行っています。
日々仕事をしていると療法士と看護師のやり取りで
相手に「何でうまくいかないのかな」、「こうあってほしいな」って思うことが出てきます。
看護師さんに○○してほしい、と伝えるものの
「忙しいし難しいな・・・」
「それはどちらの仕事だろう・・・」って話になって、うまく行かないことがあります。
ところが、先日、とてもスムーズに話ができて、パートナーシップって「この感覚!」って思う出来事がありました。
それは、リハビリ職員から出た「リハビリ訓練終了間際のトイレ介助の引継ぎがうまくいかない」という意見について、私と病棟師長、そして病棟担当主任と3人で検討した時の事です。
当院でのリハビリ訓練の多くは40分あるいは60分以上のマンツーマンで行っています。
その日行う訓練は、どの患者さんが何時から何時までの訓練時間で、どのリハビリ職員が担当するかというのが、おおよそ決まっているのです。
ただ、訓練終了間際に患者さんがトイレに行きたくなることがあります。
すると担当しているリハビリ職員がトイレにお連れするのですが、その間に次の患者さんとの約束の時間が迫ってくるため、リハビリ職員はその介助を病棟の看護師などに引き継ぐ必要があるのです。
療法士としては、引き継がないといけない事情があるので、「それは看護師の仕事として引き受けてほしい。」と思っているのですが、お願いしてもなかなか来てもらえなかったり、時には断られたり。
そうなってしまうのはなぜ???
3人での検討の中で、その場面を振り返って
当事者であるリハビリ療法士と看護師の双方の状況を考えてみようということになりました。
まず、リハビリ療法士は、次の患者さんとの約束の時間が迫っていて依頼しなくちゃいけない。
依頼された側の看護師は、患者さんの対応でその場を離れることが出来なかったり、何かの対応中で引き受けられない。
例えば、病棟トイレの近くには食堂があって、その付近に看護師がいることがあるのですが、リハビリをしている患者さんたちは移動するのがまだ不安定なのに自分はできると思って能力以上に動いてしまうことがあり、その場におられる患者さんたちの見守りをするために場所を離れるわけにはいかなかったのです。
その役割は、転倒を防止するための病棟の取り組みだったのですが、その事は知られていませんでした。
時には複数の看護師がいることもありましたが、どの看護師がその担当かは、とっさにはわからず、もしかすると、その役割に気が付いていなくて、トイレに近いのでリハビリ療法士が助けを求めることもあったのかも。
でも、見守り担当の看護師は、自分が動くわけにはいかず断るかもしれません。
それぞれ理由があるけど、その場では共有できなかったのかもしれない。
正直にリハビリ療法士と看護師それぞれの考えを話したことで、お互いの背景、事情がわからないからうまくいかないのかも・・という話になり
『状況に応じて、お互いに助け合って対応出来るスタッフを育てたい』
と、3者の意見が一致して、対応策と周知の方法があっという間に決まりました。
そもそも、それぞれ専門家同士なので1つの課題について見方や動き方が違うことはあるかもしれません。
でも、お互いの仕事のことを知っている、わかっていると思っていて、
実は意外とお互いの仕事のことをよくわかっていないし、相手の状況もわかっていない。
それなのに、「こちらは困っている。だから、あなたが変わるもの。」と思って問題を前にすると、当然「こうあるはず」と、相手に自分が思うように変わってもらおうと話を持っていっちゃう。
改めて観ると、一方的で、強引なコミュニケーションです。
過去には、話し合っても、お互い譲らず、話も進まなくて困ることもありました。
でも、全然気が付いていなかったんです。
振り返ると、3者が3者ともに「相手がこうあるはず」という考えを横において、相手と一緒の目線で物事を観て、コミュニケーションしたことが機能したと思います。
おかげでパートナーシップが深まり、いろんな事が持ち出しやすい関係になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。