私は、仙台で教員をしています。
人の話を聴く時は、「あり方」が大切ということを実感した出来事がありました。

期末テストが近づいてきたある日、学生のA君が教員室へやってきました。

ここからは、実際のA君と私の会話です。
かっこの中に、私の心の声を書いておきます。

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A「先生、質問があるんですけど・・・。」

私「はい、何ですか?」 (あら、A君から質問なんて珍しい)

A「先生、テストはどこが範囲ですか?」

私「習ったところ、全部です。」 (ちゃんと授業の最後の時にも言ったけどな~)

A「配られたプリントからも出ますか?」

私「範囲には、含まれますよ」 (なぜこんなに知りたいのかな?勉強する範囲を狭めたいのかなぁ…)」

A「先生が『ここは書かなくてもいいよ』といいながら板書したところからは出ませんよね?」

私「それには、教科書に書いてある場合や前回の授業で既にノートに書いてあるので、という場合もありますからね。」

(そんなに勉強したくないの?)

A「△△の章は勉強しておいた方がいいですか?」

私「それは、A君の判断で。」 (何としても聞き出して、最小限の勉強で単位を取りたいの?)

A「記述はどれくらい出ますか?」

私「まだ作問が終わっていませんから分からないです…。」

(その必死さを勉強で発揮し、教員とのやり取りも普段からこのくらいできるといいのに…)

 

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A君に限らず、テスト期間が近づくと生徒たちの何人かは入れ替わり教員室にやって来て、似たような会話をして行くのでした。

私の返答も、その時頭で考えていることも、毎回そう違いはありませんでした。

ところが今回は、コーチング連続講座で「聴き方」の宿題に取り組み中でした。

ここまで会話を続けてからようやく私は、
A君の話を「共感的に聴いてみよう。」と思いつきました。

*「共感的に聴く」・・・コミュニケーションスキルコース3回目

それから、改めてA君の質問を受け取る事にしました。

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A「○○については、×××を覚えておけばいいですか?」

私「そう思うんだ。ということは、A君は○○については、×××がポイントだと捉えているのかな?」

A「はい、そうなのかなって思ってます。 ちなみに△△はどうですか?」

私「そうか、Aくんは、△△についても重要だって思うんだ。」

と、さらに聴いていきました。

いつもの私だったら、このあたりで、

「も~しつこいな~。いくら聞かれても問題を教えるわけにはいきませんよ(`^´)」

と終わりにするところでしたが、今回は、ふっと、思ったんです。

もしかしたら、「Aくんは、不安なんじゃないか?」と。

そこで、A君に伝えてみました。

私「ひょっとして、A君は不安なのかな?科目はたくさんあるし、実技試験もあるものね。」

A「そうなんです。勉強する気はあるけど、どこから手を付けていいのかが分からなくて。
それで不安になってしまって。」

私「なるほど、確かにそうだよね。今度の期末試験は12科目もあるし。」

A「試験とは別にレポート課題もあるし。単位は落とすわけにはいかないし、不安です。」

私「うんうん。今回、再試験だったらどうしよう、進級大丈夫かな~とか。試験も不安だけど、その先のことも心配になってきちゃうんだね。」

A「ホントにそうなんですよ~。不安だし、すごく心配なんです。
でも、グダグダ言ってても仕方ないんで、帰って勉強します!」

こう言うと、Aくんはサッと帰っていきました。

私はそれまでは、テスト範囲をしつこく聴きたがる学生は、

勉強したがらない怠けた生徒だという「パラダイム」で

判断してしまっていた事に気づきました。

*「パラダイム」・・・・決めたつもりはないのに、
無意識にそうとらえてしまっている価値観の枠組みのようなもの。

ずっと学生の質問や言ったことには対応してきたけど、

生徒の心の底にある「思い」を「聴く」ことができていなかったなぁ~と感じました。

人の話を聴く時は、「あり方」が大切ということに改めて気付いた出来事でした。

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文:F・S 企画・編集:高橋さやか